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今は新型コロナワクチンの摂取が進み、米国の景況感は極めて強いが、
来年以降はGDP成長率が年2~3%程度に鈍化する見通し
今、米国では新型コロナワクチンの接種が佳境を迎えており、足下の景況感は極めて強くなっています。しかし、3月17日に閉会した連邦公開市場委員会(FOMC)で示された経済予想サマリー(SEP)によると、来年以降のGDP成長率は、また昔のように年率2〜3%に戻っていく見通しです。
「素材」や「工業」などのシクリカル(景気敏感)株は、景気拡大の前半部分では市場平均をアウトパフォームすることで知られていますが、後半部分では逆にアンダーパフォームします。
もし今が景気拡大のピークなら、そろそろ次のことを考えなければいけません。例えば、景気が減速し、金利上昇が落ち着きはじめると、製薬会社のようなディフェンシブ株が見直されます。そこで今日は、薬品セクターについて書きたいと思います。
薬品セクターは、ずっと人気が離散したままで、セクターPER(株価収益率)がかなり下がりました。今は1999年頃のピーク(30倍)の半分程度のバリュエーションで取引されています。
投資家が薬品セクターを嫌っている一因は、多くの大型薬が近くパテント切れに直面するからです。薬品セクターにとって、これは避けて通れない試練だと思います。しかし、そうしたリスクはすでに株価に反映されているため、現在は割安で取引されているのだと思います。
ここからは、薬品セクターの代表的な銘柄を具体的に紹介します。
【アッヴィ(ABBV)/PER:7.8倍】
世界で最も売れている薬「ヒュミラ」が2023年にパテント切れに!
アッヴィ(ティッカーシンボル:ABBV)は、2012年にアボット・ラボラトリーズからスピンオフした製薬会社です。2020年には、アイルランドの製薬会社・アラガンを買収しました。
アッヴィの主力薬は、リューマチや乾癬(かんせん)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(クローン病)などの治療薬「ヒュミラ」で、2020年の売上高は198億ドルでした。この「ヒュミラ」は、今、世界で最も売れている薬だと言われています。
しかし「ヒュミラ」は、2023年にパテントが切れます。「ヒュミラ」は、アッヴィの売上高の実に40%を占めているので、パテント切れになるとアッヴィにとっては非常に痛いです。
その対策として、アッヴィは「ヒュミラ」後継である「スキリージ(リサンキズマブ)」という薬を出しています。この薬の2020年の売上高は15.9億ドルでした。
また、関節リウマチに効く「リンヴォック(ウパダシチニブ)」というJAK阻害薬は、2020年に7.3億ドルを売り上げました。さらに、アッヴィは「イムブルビカ(イブルチニブ)」というB細胞性腫瘍薬と「ベネクレクスタ」という抗悪性腫瘍剤(BCL-2阻害剤)を出しており、2020年の売上高はそれぞれ53.1億ドルと13.4億ドルでした。
買収したアラガンの薬「ボトックス・セラピューティック」の2020年売上高は13.9億ドル、同じく「ボトックス・コスメティック」の2020年売上高は11.1億ドルでした。
アッヴィの1株当たり業績は下のグラフのようになっています。
アッヴィは、2022年のコンセンサスEPS予想である13.67ドルを当てはめると、現在の株価収益率(PER)は7.8倍で、非常に低いと言えるでしょう。
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【アムジェン(AMGN)/PER:13.9倍】
売上50億ドルもある治療薬のパテントが2023年に切れる予定
アムジェン(ティッカーシンボル:AMGN)は、1980年に創業されたバイオテクノロジー企業です。
アムジェンの主力薬のひとつ「エンブレル(エタネルセプト)」は関節リウマチ治療薬で、腫瘍壊死因子(TNF)に結合して作用を阻害する仕組みです。アムジェンの2020年における売上高は50億ドルでしたが、米国でのパテントが2023年に切れる予定です。
アムジェンは「プロリア(デノスマブ)」という骨粗鬆(こつそしょう)症という骨がもろくなる病気の治療薬も出しています。2020年の売上高は27.6億ドルでしたが、米国のパテントが2021年に切れてしまいます。また「ニューラスタ(ペグフィルグラスチム)」という乳がんの治療薬も出しており、2020年の売上高は23億ドルでした。さらに「オテズラ(アプレミラスト)」は尋常性乾癬の治療薬ですが、2020年の売上高は22億ドルでした。ただ、米国のパテントは、2023年に切れる予定です。
その他にも、アムジェンは肺がんや喘息などの分野で新薬を開発しているほか、前述した「ヒュミラ」のバイオシミラー薬(先発薬の特許切れ後に発売される類似バイオ医薬品)を準備中です。
アムジェンの1株当たり業績は下のグラフの通りです。
アムジェンは、2022年のコンセンサスEPS(18.17ドル)を当てはめると、現在、PER13.9倍で取引されています。
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【ブリストルマイヤーズスクイブ(BMY)/PER:7.9倍】
「レブラミド」や「エリキュース」のパテント切れが迫る!
ブリストルマイヤーズスクイブ(ティッカーシンボル:BMY)は、1887年に創業された製薬会社で、1989年にスクイブと合併し、さらに2019年にはセルジーンを買収しました。
ブリストルマイヤーズスクイブは「レブラミド(レナリドミド)」と呼ばれる多発性骨髄腫を治療する抗造血器悪性腫瘍剤を扱っています。2020年の売上高は121億ドルでしたが、欧州と日本では2022年にパテントが切れる予定です。
また「エリキュース(アピキサバン)」と呼ばれ、虚血性脳卒中や全身性塞栓症を抑制する血液凝固阻止剤も販売しています。2020年の売上高は91.7億ドルでしたが、2026年にパテントが切れてしまいます。さらに「オプジーボ(ニボルマブ)」は、悪性黒色腫を治療するヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品で、2020年には70億ドルを売り上げました。
なお、ブリストルマイヤーズスクイブは、新薬候補として経口乾癬治療薬を開発中です。
ブリストルマイヤーズスクイブの1株当たり業績は下のグラフのようになっています。
ブリストルマイヤーズスクイブは、2022年のコンセンサスEPS(8.09ドル)を当てはめると、現在のPERは7.9倍になります。
⇒ブリストルマイヤーズスクイブ(BMY)の最新チャートはこちら!
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【イーライ・リリー(LLY)/PER:21.3倍】
臨床試験中のアルツハイマー治療薬の承認で、売上高100億ドルも!
イーライ・リリー(ティッカーシンボル:LLY)は、1876年に創業された製薬会社です。
イーライ・リリーの主力製品のひとつは糖尿病を治療するGLP-1受容体作動薬「トルリシティ(デュラグルチド)」で、2020年の売上高は50.7億ドルでした。
また、糖尿病インスリン療法の「ヒューマログ(インスリン・リスプロ)」は2020年の売上高が26.3億ドル、悪性胸膜中皮腫、ならびに非小細胞肺癌の治療薬「アリムタ(ペメトレキセド)」は同23.3億ドルでした。さらに、「トルツ(イキセキズマブ)」という尋常性乾癬の治療薬も手掛けています。
イーライ・リリーの新薬候補としては「ドナネマブ」という商品名のアルツハイマー治療薬が臨床試験中です。もし、この「ドナネマブ」が承認されれば、売上高100億ドルに達する可能性があるとも言われていますが、開発は容易ではありません。また、タイプ2糖尿病治療薬の「ティアゼパタイド」も開発中です。
イーライ・リリーの1株当たり業績は次の通りです。
イーライ・リリーは、2022年のコンセンサスEPS(8.68ドル)を当てはめると、現在はPER21.3倍で取引されています。
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【ジョンソン&ジョンソン(JNJ)/PER:16倍】
薬品部門と医療機器部門、日用品部門の3部門で事業を展開
ジョンソン&ジョンソン(ティッカーシンボル:JNJ)は、1887年に創業された製薬会社です、薬品部門(2020年売上高456億ドル)、医療機器部門(2020年売上高230億ドル)、日用品部門(2020年売上高141億ドル)の3本柱で成っています。
代表的な薬としては、2020年は、クローン病治療薬「ステラーラ(ウステキヌマブ)」の売上高が77億ドルで、関節リウマチ治療薬「レミケード(インフリキシマブ)」の売上高が37.5億ドル、多発性骨髄腫の治療薬「ダラザレックス(ダラツムマブ)」の売上高が41.9億ドル、B細胞性腫瘍の治療薬「イムブルビカ(イブルチニブ)」の売上高が1.3億ドルでした。
下のクラフはジョンソン&ジョンソンの1株当たり業績です。
ジョンソン&ジョンソンは、2022年のコンセンサスEPS(10.28ドル)を当てはめると、現在はPER16倍で取引されています。
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【メルク/PER:10.9倍】
売上高の30%を占める癌治療薬が2028年にはパテント切れに
メルク(ティッカーシンボル:MRK)は、1891年に創業した製薬会社です。
メルクの主力製品「キイトルーダ(ペムブロリズマブ)」は癌を治療する抗PD-1抗体薬で、2020年には143.8億ドルを売り上げましたが、2028年にはパテントが切れます。売上高の30%を占める大型薬なので、その穴を埋めるのは容易ではありません。
その他に糖尿病選択的DPP-4阻害剤「ジャヌビア(シタグリプチン)」や、子宮頸癌(しきゅうけいがん)予防ワクチンの「ガーダシル」を扱っており、2020年の売上高は、それぞれ52.8億ドルと39.4億ドルでした。
なお、新薬候補としては、HIV薬や「ガーダシル」の後継薬などを開発しています。
メルクの1株当たり業績は下のグラフのようになっています。
メルクは、2022年のコンセンサスEPS(7.11ドル)を当てはめると、現在はPER10.9倍で取引されています。
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【ファイザー(PFE)/PER:12.3倍】
新型コロナウイルス向けワクチンの開発会社として話題に
ファイザー(ティッカーシンボル:PFE)は1942年に創業した会社で、最近では、開発した新型コロナウイルス向けワクチンが最初に承認されたことで話題を呼びました。
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ファイザーの主力薬ポートフォリオを見ると、「プレベナー13」という肺炎球菌結合型ワクチンの割合が大きく、2020年の売上高は58.5億ドルに達しました。しかし、「プレベナー13」のパテントも2026年に切れてしまいます。
また、乳癌の治療薬「イブランス(パルボシクリブ)」は2020年の売上高が53.9億ドルで、2027年にパテントが切れ、虚血性脳卒中、全身性塞栓症を抑制する血液凝固阻止剤の「エリキュース」は2020年の売上高が49.5億ドルで、2026年にパテントが切れます。
このようにファイザーは、他社よりパテント切れになる薬を多く抱えています。
下のグラフはファイザーの1株当たり業績を表しています。
ファイザーは2022年のコンセンサスEPS(2.95ドル)を当てはめると、現在のPERは12.3倍となります。
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【今週のまとめ】
今後見直されるであろう「ディフェンシブ株」として、
米国の大手製薬会社の7銘柄を紹介!
今、米国では、新型コロナウイルス向けワクチンの接種が進んでいることもあり、景況感が極めて強くなっていますが、経済予想サマリーによると、来年以降のGDP成長率は年率2〜3%に戻っていくと見られます。もし今が景気拡大のピークなら、これまで人気のあったシクリカル(景気敏感)株から、そろそろ製薬会社のようなディフェンシブ株が見直されてくるでしょう。
そこで代表的な米国の製薬会社として、アッヴィ、アムジェン、ブリストルマイヤーズスクイブ、イーライ・リリー、ジョンソン&ジョンソン、メルク、ファイザーの7社を紹介しました。ぜひ参考にしてください。
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