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ウクライナ情勢の深刻化により先行きの不透明感が増す一方、
FRBの金融引き締めピッチが鈍ることへの期待も
ロシアのウクライナ攻撃が止まらずに戦火がさらに激しくなっていることから、日米欧によるロシアへの経済制裁が非常に厳しいものとなり、投資環境の不透明さが増しています。その一方で、制裁強化による世界景気の減速懸念が強まったことで、FRBの金融引き締めピッチが鈍ることへの期待から、ややリスクオンムードが強まり、足元の日米の株式市場は底堅い動きを続けています。
振り返れば、2月24日の日経平均株価は大幅に5日続落し、前営業日の22日終値比478.79円安の2万5970.82円と、1月27日の2万6170.30円を下回りました。終値ベースの昨年来安値を更新し、2020年11月20日以来、1年3カ月ぶりの安値をつけたのです。これは、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部での特別軍事作戦の実施を決めたと伝わったことが嫌気された結果です。2月24日は、ロシア軍の攻撃開始が伝わると売りが加速し、下げ幅は一時673.97円まで拡大する場面がありました。
翌2月25日の日経平均株価は6日ぶりに大幅に反発し、前日比505.68円高の2万6476.50円でした。これは24日の米国株式市場の上昇が好感されたためです。この日は、FRBが地政学リスクへの対応でタカ派姿勢を後退させるとの期待が高まり、年明け以降の下げがきつかったハイテク株を中心に買い戻しが入りました。
ちなみに、2月24日のナスダック総合株価指数は6日ぶりに大幅に反発し、前日比436.098ポイント高の1万3473.585ポイントでした。また、一時859.12ドル安まで下落したNYダウ平均は取引終了間際に上昇に転じ、同92.07ドル高の3万3223.83ドルで終えました。
そして、週明け2月28日の日経平均株価は続伸し、前週末比50.32円高の2万6526.82円と、小幅ながら続伸しました。この日は、ロシアとウクライナが2月27日合意した停戦交渉が、28日午前(日本時間同日午後)に始まると伝わったことで、この交渉での停戦合意実現期待で底堅い動きとなりました。
ただし、2月26日の日経平均先物3月物の夜間取引の高値は、前日比470円高の2万6970円でした。週明け28日の安値は2万6260円でしたので、夜間取引の高値からは一時710円も下落しました。
そして、3月1日の日経平均株価は3日続伸し、前日比317.90円高の2万6844.72円でした。
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ロシアの銀行がSWIFTから締め出されたことでルーブルが暴落!
さらに、ロシア株・債券が主要株価指数から除外される可能性も
ところで、米国、EU、日本などは、2月28日までにロシアの銀行を「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出すなどの制裁方針を示しました。また、米国の財務省は28日、米国内のロシア中央銀行の資産を事実上凍結すると発表。米国人や米国企業によるロシア中央銀行やロシア財務省、政府系ファンドとの取引を禁じました。
一連の制裁の目的は、ルーブルの暴落です。ルーブルが急落すれば、ロシア国内でのインフレが加速し、景気悪化や国民の不満を招き、プーチン政権が対ウクライナへの戦略変更を余儀なくされたり、政権自体が立ち行かなくなって崩壊する可能性があるからです。
なお、FX取引では、投資家がルーブルを売りたくても売れない異例の事態も生じているそうです。ウクライナ侵攻をきっかけに銀行間市場でルーブルの流動性が極端に低下し、安定的な取引レートを提供できなくなっていることが主因です。
また、MSCIが主要株価指数からロシア資産の除外に動く可能性があると説明するなど、ロシアの株式と債券が主要な国際的ベンチマークから除外されるリスクが高まっています。
一方、ロシア国内では、ロシア中央銀行が2月28日、モスクワ証券取引所の同日の株式取引を終日見送ると発表しました。そして、ロシア中央銀行は28日、政策金利を年9.5%から20%に引き上げると決めました。このように、ルーブル絡みの取引を中心に、金融市場が異常事態に陥っています。
石油大手のBPやシェル、自動車大手のボルボやBMなど、
多くの欧米企業が相次いでロシアからの撤退を発表!
民間の実業ベースでも、大きな影響が顕在化しています。
英国の石油大手BP(BP)は2月27日、ロシアの石油大手ロスネフチの株式を売却すると発表しました。ロスネフチと手掛けてきたロシア国内での合弁事業もすべて解消し、同国から事実上撤退します。
また、英国の石油大手シェル(SHEL)は28日、ロシア・サハリン沖で進めていた石油・天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」から撤退する方針を発表しました。ロシアのガス大手ガスプロムとの合弁を解消し、共同展開してきたシベリアのサリム油田などの権益からも引き揚げます。
そして、スウェーデンのボルボは2月28日、ロシアでのトラック生産を停止したと発表。ダイムラートラックホールディングも28日、ロシアで現地商用車大手カマズとの合弁事業の凍結を発表しました。さらに、GM(GM)も28日、ロシア向けの全自動車輸出を当面停止すると発表しました。
このように、レピュテーションリスク(評判が低下する危険性)を恐れた欧米企業が、ロシアとの関係を根本から見直す動きが加速しています。
足元の投資環境は「極めて先行きが不透明」な一方で、
政府による金融・財政両面からの強力なサポートが期待できる
ロシアの石油・ガスに依存する欧州や、足元でインフレに苦しむ米国が、「返り血」覚悟でロシアと金融・経済面で徹底対決する姿勢を打ち出したことで、株式投資をする際の前提条件が大きく変わってしまいました。このため、投資環境は「極めて先行きが不透明な状況」と言えるでしょう。
しかし、日米欧の国家が、そのような意思決定をした以上、その副作用に対して最大級の処方箋を出すはずです。このため、今後の日米欧の株式市場に関しては、ウクライナ絡みのニュースヘッドラインを受けて、短期的な急落場面はあるかもしれませんが、下がれば下がっただけ、政策当局による金融・財政両面からの強力なサポート策が講じられる見通しです。
当面の物色テーマとしては「防衛」「サイバーセキュリティ」、
セクターは「海運」「非鉄金属」「鉄鋼」「鉱業」「電気・ガス」に注目
なお、2月28日行われたウクライナ停戦交渉については、ロシア・ウクライナ双方が結果を持ち帰って協議した後、再開する可能性があるということです。交渉の余地がある間は、停戦期待が世界の株式市場の下支え要因となることでしょう。
しかし、プーチン大統領は2月28日、フランスのマクロン大統領と電話会談し、ウクライナの「非武装化」や「中立的地位」、クリミア半島におけるロシアの主権承認が問題解決の条件だと主張したそうです。強気の姿勢をまったく崩していないので、双方が合意できるか否かは予断の許せない状況です。
なお、ドイツのショルツ首相は2月27日、国防費をGDP比で2%以上(従来は1.5%程度)へと大幅に引き上げる方針を表明しました。これを受け、欧米各国で防衛費を積み増す動きが広がるとの見方が強まっています。また、ウクライナに対しては、欧米各国が相次いで武器提供など軍事支援を強化する姿勢を打ち出しています。
一方、ロシア、ウクライナ両国では、官民のハッカーや国際ハッカー集団「アノニマス」などが入り乱れ、政府機関などを標的にサイバー攻撃が激しく行われています。そんななか日本国内では、サイバー攻撃により取引先の部品メーカーでシステム障害が発生し、部品の供給が滞ったため、トヨタ自動車(7203)が3月1日、国内の14工場すべてで生産を止めました。
このような状況を鑑み、当面の物色テーマとしては「防衛」「サイバーセキュリティ」に注目しています。
また、2月28日、東証33業種では「海運」「非鉄金属」「鉄鋼」「鉱業」「電気・ガス」などの値上がりが目立ちました。これらは、バリュー面で割安感が強い銘柄が多く属し、インフレに強いセクターと考えられます。よって、セクターとしてはこれら5業種に注目しています。
最後に、日経平均株価に関してですが、当面の下値は2月24日の安値2万5775.64円と見ています。一方、上値は、25日移動平均線(3月1日時点で2万7026.51円)が第一メド、2月10日の高値2万7880.70円が第二メドです。
地政学的なリスクは高いですが、政策発動期待がある以上、今後は「押し目買い」が報われるでしょう。ただし、ウクライナ問題が沈静化すれば、FRBは金融引き締めを行います。このため、相場全体が中長期的な上昇トレンドに回帰するとは見ていません。よって、現在は、中長期の調整局面における「リバウンド」という認識で、慎重に相場に臨むことをおすすめします。
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