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米国のトランプ政権は、中国のネット関連企業に対する締め付けを強化しています。また、香港情勢を巡っても米中は対立を深めています。こうした米中対立の激化が、香港を中心としたアジアの株式市場の上値を圧迫する要因となっています。
具体的に言うと、米財務省は8月6日、米国市場に上場する中国企業が2022年1月までに監査基準を満たさなかった場合、上場廃止となるようルールを改正する方針を示しました。また、同日、トランプ大統領は、中国の動画投稿アプリ「TikTok」とテンセントが手掛ける「WeChat(ウィーチャット)」に関わる取引を45日後に禁じる大統領令に署名しました。
さらに、米政府は8月7日、香港への自治侵害などを理由に、香港政府の行政長官らに制裁を科すと発表しました。一方、各種報道によれば、香港警察は10日、「民主の女神」として知られていた周庭(アグネス・チョウ)氏やメディアグループの創業者で民主活動家の黎智英氏らを、香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕するなど、民主派への取り締まりを本格化しています。
このような情勢悪化を受け、8月7日の香港株式相場は大幅に続落し、香港ハンセン指数の終値は前日比398.96ポイント(1.60%)安の24531.62ポイントでした。そして、週明け10日の香港ハンセン指数は、前週末比154.19ポイント(0.63%)安の24377.43ポイントと6週ぶりの安値で取引を終えました(ただし、後述の通り、8月11日の香港ハンセン指数は上昇しています)。
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また、8月7日の東京株式市場では、香港ハンセン指数やアリババ(BABA)の下落を嫌気する格好で、ソフトバンクグループ(9984)や、アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)などの半導体関連に代表されるIT関連株の軟調さが目立ちました。
米国株式市場は、経済対策への期待感から力強い値動きに!
トランプ政権の対中強硬策も選挙用パフォーマンスなので心配なし
その一方で、米国の株式市場は非常に強い値動きを続けています。8月10日のNYダウは7日続伸し、前週末比357.96ドル高の2万7791.44ドルと、2月24日以来、5カ月半ぶりの高値で取引を終えています。この日は、経済対策への期待感で株式が買われました。
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ちなみに米国議会では、経済対策を巡って与野党が対立しています。そして、このままでは与野党による追加経済対策の合意が見込めないとトランプ大統領は判断し、大統領権限で追加経済対策を発動しました。具体的には、失業保険給付を週400ドルに減額した上での継続、給与税徴収の一時的留保、住居の立ち退き猶予の延長、学生ローンの返済猶予などを盛り込んだ「景気支援の大統領令」に8月8日に署名しました。
一方、ムニューシン財務長官は8月10日、米CNBCで「野党・民主党との協議を再開し、今週中にも与野党が合意できる」との見通しを述べたそうです。このため市場では、議会での協議が進展するとの見方が強まっています。この合意形成が実現すれば、米国経済には極めてポジティブな材料となるでしょう。
こうなってくると、米国株式市場における懸念要因は、米中対立の激化による経済への悪影響くらいしか見当たりません。ですが、私は、現在のトランプ政権の対中強硬策や発言は、トランプ氏の支持者向けの選挙用パフォーマンスだと思っています。また、大統領選挙を控えたトランプ氏が自国の景気を悪化させるようなことは決してしないとも見ています。ですから、今後、仮にトランプ政権がさらなる対中強硬策を打ち出して市場がそれを嫌気するような局面となっても、それは「絶好の押し目買い好機」になると考えています。
日経平均株価は依然としてボックス相場が継続中だが、
この先「上昇トレンドへ回帰」する可能性は高い!
それにしても、米国株がこんなに強いのに、日本株は冴えない動きを続けています。日経平均株価は、6月9日の2万3185.85円を上限、6月15日の2万1529.83円を下限とするボックス相場を約2カ月続けています。
上値が重くなっている需給面での最大の要因は、海外投資家が日本株に関心を示さず、足元では買うどころか売り越していることです。
7月第5週(27日~31日)、海外投資家は先物(日経平均先物、TOPIX先物、ミニ日経平均先物、ミニTOPIX先物の合計)を2578億円売り越しました。売り越しは2週連続です。また、現物株(東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計)を2週ぶりに売り越しました。売り越し額は4624億円でした。つまり、7月の最終週に海外投資家は先物・現物合算で7202億円も売り越しました。
このため、7月最終週の日経平均株価は、7月28日の2万2842.19円が週高値、週末7月31日の終値2万1710.00円が週安値になるという、まさに「急落週」となったのです。
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しかし、週明けとなる8月3日の日経平均株価は前週末比485.38円高、翌4日は前日比378.28円と続伸し、終値ベースでは2日で863.66円上昇しました。7月31日が前日比629.23円安でしたから、その下げ幅をあっさり2日で取り戻した動きを見る限り、この週(8月3日~7日)は、海外投資家からの売りはいったん止まったのかもしれません。とはいえ、依然としてボックス上限付近であり、心理的節目の2万3000円を上抜けるためには、その水準でも海外投資家が買ってくる必要があります。
こうした状況ですが、私は、日経平均株価に関する想定を前回から変更していません。つまり、「メインシナリオは「上昇トレンドへの回帰」(ザックリとした実現確率60%)、サブシナリオは「ボックス相場継続」(同35%)です。一方、ブラックスワン(Black Swan:マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象)は、「下落トレンドへの転換」(同5%)となります。
日経平均株価が75日移動平均線を割り込まない限り、
一時的な下落局面は「絶好の押し目買い好機」と考えよう!
テクニカル的には、25日移動平均線(8月7日現在2万2521.16円)を終値で上回っている限り、好需給を背景に「上振れ」しやすい状況となるでしょう。11日は、香港株式市場で香港ハンセン指数が反発して始まり、前日比2.11%も上昇。また、上海株式相場などアジア株が総じて堅調に推移したこともあり、日経平均株価は25日移動平均線を上抜けしてきました。こうなってくると、メインシナリオである「上昇トレンドへの回帰」の実現への期待が膨らんできます。
なお、前述のブラックスワン(下落シナリオ)の発生確度が急上昇する重要なサインは、75日移動平均線(8月7日現在2万1680.89円)を終値で割り込むことです。よって、これが発生しない限り、7月31日のような値幅を伴った下落局面や8月7日のような3日続落の局面など「多くの投資家が弱気に傾きがちなタイミング」は、「絶好の押し目買い好機」になるはずです。
結論として、日本株に関しては、日経平均株価が75日移動平均線割れが起こらない限り「強気」で攻めましょう。
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