日本はASEANの中では民主主義が定着しているインドネシアやミャンマーに多額の投資をしているシンガポールとよく協議しつつ、一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう。

 ミャンマーの軍事政権も新型コロナ感染問題による経済停滞に加え、海外からの投資の激減による経済停滞に長く耐えられるわけではない。

新疆ウイグル、香港問題は
対中戦略全体の中で解決を模索

 新疆ウイグルや香港の人権問題は、急速に国力を高めている中国を相手にするだけに、さらに難しい要素を内包している。

 新疆ウイグルは共産党支配の下、漢族を超える人口を持つウイグル族への弾圧が激しい。中国は「核心的利益」として外国の介入は許さないとする。

 この問題で、欧米諸国はウイグル族への人権抑圧に責任がある当局者に対し資産凍結などの制裁を科し、中国はそれへの報復として欧米の当局者へ制裁を科した。

 制裁という強いアプローチは中国の報復を招き、事態が改善されているわけではない。

 同様のことが香港問題についてもいえる。

 香港の民主化に対する中国の弾圧に対して、米国は香港優遇措置を停止するとともに、香港政府や国の当局者に対して制裁を科している。

 しかし、これらの制裁措置は立場の明確な表明という意味はあるが、実効的な効果を上げているわけではない。

 むしろその後、中国は香港に国家安全維持法導入に続いて、選挙法を改定して「愛国者」という概念の下に親中国派を立法会選挙の候補者とするような仕組みを導入しようとしている。高度な自治と自由な資本主義を認める「一国二制度」は崩壊したといえる。

 新疆ウイグル問題も香港問題も人権など民主主義的価値が大きく損なわれているが、問題の解決は中国との関係への全般的アプローチの中で考えていかざるを得ない。

 中国に対して問題の改善に向けて強い圧力をかけられるとすれば、おそらくG7、さらにはQUAD(日米豪印戦略対話)の枠組みだろう。

 しかし中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国だ。G7といえども従来持っていたような強力なてこがあるわけではない。

 米国は同盟国と連携して中国に圧力をかけていくアプローチをとるが、中国も「一帯一路」やワクチン外交などを通じて特に途上国への影響力は飛躍的に拡大している。