総予測#49Photo by Kazutoshi Sumitomo

国内化学最大手の三菱ケミカルホールディングスは2020年、越智仁社長の後継にベルギー出身のジョンマーク・ギルソン氏を招聘すると発表し、産業界を驚かせた。特集『総予測2021』(全79回)の#49では、その驚愕人事の思惑を、指名委員を務める小林喜光会長に聞いた。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「週刊ダイヤモンド」2020年12月26日・2021年1月2日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

日本はデジタルで米中に後れを取ったが
今、一発逆転のチャンスが到来している

――2020年10月、三菱ケミカルホールディングス(HD)は次期社長に、食品や医薬関連の製品を手掛ける仏ロケットのジョンマーク・ギルソンCEO(最高経営責任者)を招くと発表し、産業界を驚かせました。

 ギルソン氏は当社の財務状況はもちろん、もうける軸(資本効率性の重視)、テクノロジーの軸(イノベーションの追求)、社会性の軸(サステナビリティ〈持続可能性〉の向上)という三つの軸で企業価値を高めていく「KAITEKI経営」の哲学をあっという間に勉強し、指名委員会の質問に的確に答えてみせた。

 プライベートエクイティ・ファンドにもいたので、アナリストのようなセンスもあります。加えて56歳(発表時)という若さと、適切な“お値段(報酬額)”、そして、しがらみのなさがあった。

 まず時代認識から整理しますが、今、時代はまさに革命期に入っています。ビッグデータやAI(人工知能)などの技術革新が進む第4次産業革命は、いわば人間の脳を外部化することを意味している。「人間とは何か」をも問い掛けられる事態となっているのです。

 しかし、日本はこうした時代の主戦場であるバーチャルのビジネスで米中に大きく差をつけられてしまった。

 インターネットやコンピューターをコミュニケーションツールではなく、ビジネスの対象として捉え切れなかったこと、また、個人情報が集まるデータの扱いに及び腰になってしまったことが原因です。デジタル化という時代認識はあったのに、行動が伴わず、経済が30年間停滞してしまった。

 しかし、ここにきてチャンスが到来しています。

――日本が劣勢をはね返すことができるのですか。