食品大手、江崎グリコで起きた大規模システム障害で、原因となったシステム刷新のプロジェクトを手掛けた主幹ベンダーがデロイト トーマツ コンサルティングであることが分かった。復旧には時間がかかる見通しで、主力商品の「プッチンプリン」などが出荷できず、小売店の棚から消えている。長期連載『コンサル大解剖』内で配信している特集『デロイト内部崩壊』の第10回では、プロジェクトの詳細や大幅遅延など混乱の様子に加え、大失敗を招いた内部要因も明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
グリコの「プッチンプリン」が出荷停止
システム刷新の主幹ベンダーはデロイト
4月23日、東京都内のコンビニエンスストアやスーパーの陳列棚から「プッチンプリン」が消えていた――。江崎グリコは4月19日、乳製品や洋生菓子、果汁、清涼飲料など冷蔵食品(チルド食品)の出荷を同日に停止したと発表した。主力商品の「プッチンプリン」や「カフェオーレ」など17ブランドが対象となる。
原因は大規模なシステム障害だ。江崎グリコによると、4月3日に基幹システムを切り替えたところ、システム障害が発生し、商品の受発注や出荷業務に影響が生じたという。復旧作業を進め、いったんは18日に出荷を一部再開したものの、出荷データの不整合などが出たため、19日に出荷を再度停止した。5月中旬の出荷再開を目指すという。
大規模なシステム障害によって、商品が出荷停止に追い込まれる事態は、食品業界でも異例だ。江崎グリコは4月22日に出したプレスリリースの中で、「お客様およびお取引先様には、多大なご迷惑とご心配をお掛けしており、謹んでお詫び申し上げます。一刻も早い復旧に向けて引き続き全力で取り組んでまいります」としている。
一方、今期の業績に与える影響に関しては「現在精査中」としている。長期にわたる商品の出荷停止で売り上げへの影響が避けられないほか、出荷に絡む特別対応などでコスト増も見込まれる。とりわけ痛手となるのが、小売店の「棚」を失うことだ。営業努力によって確保した棚をほかのメーカーにみすみす譲ることになりかねない。食品メーカーにとっては大打撃である。
これほどまでのトラブルを引き起こすきっかけとなった基幹システムの切り替えプロジェクトは、どのベンダーが手掛けたのか。江崎グリコの広報は「複数のベンダーが携わったが、個社名は公表していない」とするが、ダイヤモンド編集部の取材で、プロジェクトを担った主幹ベンダーがデロイト トーマツ コンサルティングであることが判明した。
実は、デロイトが手掛けてきたプロジェクトは1年超も大幅に遅延した上に、障害を発生させた「ボロボロの案件」(コンサルティング業界関係者)だったのだ。システムが1カ月近く止まるような大惨事も極めてまれだ。
次ページでは、プロジェクトの詳細に加え、大幅遅延などの混乱の様子も明かす。また、今回の大失敗を招いた背景には、『【スクープ】アクセンチュア対抗策の不発、営業力低下、“社員ファースト”の弊害…デロイト内部資料が明かす業績悪化の「病根」』でも指摘したデロイトの内部要因もある。企業の旺盛なDX(デジタルトランスフォーメーション)需要を背景に、DXコンサルに力を入れてきたデロイトが抱える深刻な課題とは。デロイトの次なる炎上リスクについても明らかにする。